CiNii Articles に書誌情報を載せるには

きっかけは単なる思いつきで、職場で発行しているニュースレターの記事を CiNii Articles で検索可能にできたらいいな、と。

CiNii Articles での学術出版物の判別基準がどうなっているのか知らないが、 ニュースレターは学術出版物と認められるらしい。たとえば 日本地球惑星科学連合 JpGU のニュースレター JGL は記事の書誌情報が CiNii Articles に 収録されており、たとえば http://ci.nii.ac.jp/naid/40020474066 のようである。 右隅に表示されているように、情報の出所は国会図書館(NDL)らしい。 つまり JpGU は JGL の冊子体を NDL に納本しており、NDL は JGL を雑誌記事索引の 収録対象にしている、ということだ。実際に NDL の採録誌一覧に JGL が 載っている ( ここ )。

CiNii Articles は基本的に既存のデータベースを統合しているだけで、 自力でゼロから収集している訳ではない。そこで、CiNii Articles に書誌情報を 載せるにはその情報源となっているデータベースに情報を流すことになる。

最初に検討したのは JaLC で、その理由は、そもそもこれらのことを考え始めたのは JaLC の 「研究データへのDOI登録実験プロジェクト」 に参加するようになって、どうせならついでに出版物にも DOI を振ったらいいじゃん、と 考えたからだ。JaLC に DOI を登録する際には JaLC メタデータと呼ばれる情報を 提出するので、その情報をそのまま JaLC から CiNii に流して貰えれば楽ちんだな、 と思ったのである。

しかしこの案は駄目だと判った。JaLC は2,3 年前から論文情報の DOI 登録を扱っているが、 CiNii Articles には JaLC のデータベースは収録されていない。それには理由があって、 JaLC の会員はほとんどが NII の JAIRO か JST の J-Stage を利用している 大学または学協会で、JAIRO と J-Stage は元から CiNii Articles の情報源になっているため、 JaLC からメタデータを CiNii に流すことは基本的に二度手間にしかならないのである。

次に考えたのは、CiNii Articles が CrossRef を情報源にしていることから、 JaLC 経由で CrossRef に DOI 登録し、CrossRef 経由で書誌情報を CiNii Articles に 流す、という方法である。この方法の欠点は、CiNii Articles に収録させるためだけに CrossRef を利用することの妥当性に疑問があること(CrossRef に登録すると JaLC 会費とは別に 費用がかかる)で、現実的な選択肢ではないと思われる。

他に良い方法が無いかと考えてみたところ、NII の 学術機関リポジトリデータベース IRDB 経由で流す方法があることに気付いた。IRDB は国内の学術機関リポジトリに格納されている 書誌情報等を収集して蓄積しているデータベースで、 CiNii Articles の情報源のひとつに なっている。IRDB は基本的には大学や大学共同利用機関を対象にしているようだが、 運用規程 によると、特に大学に限定している訳ではないようだ。つまり国環研も、 条件を満たせば IRDB に書誌情報等を格納してもらえる筈である。

その条件は、提供リポジトリのシステムが、

  • OAI-PMH を喋れる
  • junii2 形式のメタデータを吐ける

ことである( 詳細 )。 このうち OAI-PMH は世界的な標準プロトコルなのでいいとして、 NII 独自の junii2 フォーマットに対応できるかどうかが要点となる。

ところで junii2 には DOI 用の項目が 2種類あり(selfDOI, doi)、用途が異なる。 selfDOI は、情報提供機関が NII 傘下の JaLC 準会員となり、NII 経由で JaLC に DOI を登録する際に利用する項目で、一方の doi は NII とは無関係に情報提供機関が独自に DOI を取得した場合に利用する項目である。両方の選択肢が用意されている点は 評価して良いだろう。

さて junii2 への対応であるが、技術的には OAI-PMH + junii2 など大して高度なものではないが、 自分でリポジトリシステムを作るとなると大変面倒くさい。 出来合いのソフトウェアとして NII のウェブサイト には DSpace や WEKO が挙げられている。 DSpace は広く使われているリポジトリシステムで、CGER でも7,8年前に導入が 検討されたことがある。junii2 用のプラグインを導入すれば junii2 が吐けるようになる ようなことがウェブページに書いてあるが、詳しいことは判らない。 WEKO は NII が自ら作成したソフトで、NetCommons のモジュールとして動作し、 JAIRO クラウドの基盤として使用されている。 他に理研制作の XooNIps が挙げられているが、フレームワークが Xoops Cube で、 今から導入するシステムに Xoops Cube を使うのはどうなのかという気がするので 個人的には避けたい。

機能やデザインに拘らないのであれば、WEKO を使うのが一番手っ取り早い。 という結論を得て、ちょっと WEKO を試用してみようとしたのだが、 公式サイト にまともなドキュメントが無く、一通り動かすのに苦労した。 試行錯誤したため必要十分な手順が判らなくなってしまったので、 後で再検証するか。時間があれば。