内閣府オープンサイエンス検討会報告書¶
内閣府・国際的動向を踏まえたオープンサイエンスに関する検討会では、 昨年末から、世界的なオープンサイエンスの潮流に対して日本はどう 対応するべきかに関して議論が進められていたが、3月30日付けで 報告書が公表された。 (内閣府)
軽く目を通したので要点を幾つか。
論文の根拠データは原則公開、それ以外のデータの公開は努力目標。
競争的及び公募型研究資金による研究が対象。サマリでは言及されていないが、 報告書全文では全額運営費交付金による研究も対象とすべきとされている。
大学・研究機関等は研究データの管理保存に関し、規則を定めて具体的施策を 実施すること。
他に気になった点は、
「研究データは原著論文と同等又はそれ以上の研究開発成果として位置づけられ」 (p.15)
データ公表が論文以上の成果になる文化っていうのは俄には信じがたい。 それは「科学とは知の集積である」という科学観が変更されるという ことを意味するだろう。更に敷衍すれば、論文よりもデータが評価されるなら、 データよりもそのデータを生み出す観測機器の開発の方がより評価される べきで、科学者よりも測器会社の技術者の方がより評価されるべきである、 ということになる(これは個人的に以前から疑念に思っていたことである。 現代の自然科学において観測機器の発展が占める比重があまりにも大きすぎる)。
「データサイエンティスト等の育成と活用」(p.22)
これは「育成と雇用」とするべきである。
この手の分析では一般にデータ専門家の人材「育成」が課題として 挙げられることが多いが、私見では、人材育成は大した問題ではない。 問題はその後、専門職としての雇用があるかどうかで、日本でかつて 大学院重点化で院生を増やした後に何が起こったかはこの業界に居る 人間ならば誰でも知っていることであろう。
この次の行に「人材の確保」という文面があるが、これも 「人材を雇用するための予算の確保」とする方が正しかろう。 「人材の確保」という表現では、予算はあるけど適当な人材が見つからない、 つまり人材の方が希少財のような感じを受けるが、実際は逆で、 求職者は掃いて捨てる程居るのに雇用する予算が無い、という状況の方が 支配的なはずである。
人材育成は雇用とキャリアパスが伴わなければ効果が無い。 そして、雇用の維持とキャリアパスの確立の方が明らかに難しい問題なのである。