湯本・松田『世界遺産をシカが喰う』

いろいろ資料を集めるのは楽しいんだけど、読むのがね。 主に気力的な面で。

湯本貴和・松田裕之編『世界遺産をシカが喰う シカと森の生態学』文一総合出版。 約10年前の本だが、今現在でもシカの食害が全国的に大問題であることは、例えば CiNii で「シカ 食害」と検索してみれば理解できる。 シカが人の手に負えないほど増えた理由は現時点で科学的には未解明であり、 解明される気配もなさそうに見えるんだが、実のところはどうなんだろう。 個人的には「天敵(オオカミ)が絶滅したからだ」という説を信じており、 オオカミを(トキのように)中華大陸から持ってくればいいんじゃないの、 と思ってはいるものの、真剣に検討した結果の意見ではないので 他人に強く主張するつもりはない。

武村政春『巨大ウイルスと第4のドメイン 生命進化論のパラダイムシフト』 講談社ブルーバックス、 面白そうなので買ってみたが、面白いようなそうでないような。 近年、巨大ウイルスなるものが発見されて話題になっているということは まったく知らなかったので勉強になった。それはそれとして後半の生命進化に 関する部分はちょっと空想的すぎて説得力を感じないなぁ。 細胞核の出現はウイルスの影響とかではなくて 有糸分裂の確立との関連の方が重要なのではないか。 と、この前読んだ高木由臣『有性生殖論』に強い感銘を受けたせいで そう思うのであります。 ちなみに生命・非生命の分別については池田清彦の影響で構造主義的生物学的な 立場に説得力を感じております。